第3章「マネジメント」

パーソナルトレーナーのマネジメント能力は、お客様の管理と自分自身の活動管理の両面を指します。
それぞれの管理ができていなければ活動は不安定になります。
両方の管理体制を見直し、活動の地盤が固めましょう。
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第1節「継続率に直結する経過測定」
パーソナルトレーニングを受講するお客様には必ず「何かしら」の目的があります。
ダイエットだったり、腰痛予防だったり、そのニーズは様々です。
これらの、目的はトレーニングレッスン1本では達成できない事がほとんどです。
それゆえに、トレーナーはお客様が目標を達成する為に一定期間を管理して差し上げる必要があります。
例えば体重を10kg減らしたいというお客様がいたとします。
仮に、Aというトレーナーがいたとして、パーソナルトレーニングを単発で販売、スケジュールはお客様任せだとします。「次はいつ来れそうですか?」みたいなスケジュールの立て方です。
一方、Bというトレーナーはパーソナルトレーニングをコースで販売していて、スケジュールをお客様の目標達成に合わせ、最適な頻度や間隔で提案し、提供していたとします。
この両方のトレーナーを比べてみて、どちらがお客様にとって頼りになるかと考えれば、それは当然スケジュールを管理してくれるBトレーナーです。
お客様は「目標達成」をトレーナーに依頼しているわけですから、トレーナー側は目標を達成できる根拠を用意しなければいけません。
その上で必ず提示しなければいけないのが
①効果的なトレーニング日程
②数字での経過測定
の2つです。
分かりやすく例で説明しますと、
例えば、10kgの減量が目標のお客様がいたとします。
このお客様の①効果的なトレーニング日程を「週2日のレッスンを3ヶ月間行う」とします。
これを提示するだけであれば、トレーナーでなくてもできます。
トレーナーはこの目標日程を提示して、その上でさらに
②「数字での経過測定」をしなければいけません。
お客様と目標を共有し、レッスン時に経過測定を必ず行うことで、お客様は自分の行なっているトレーニングや食事内容の効果を確認できます。
この「目標設定」と「経過測定」があってはじめて、お客様は自分の目標達成に対してのサービス価値を可視化して確認できるのです。
このように目に見えるサービスは、お客様に強く信頼され、そのサービスは長く継続されます。
目に見える管理サービスは新規カウンセリング時には強力なプレゼン効果となり、実際のサービス進行中にはお客様への絶大な信頼となり、サービス終了時にもお客様を離さないかけがえのない信用となります。
なるべく、早い段階で自分なりの管理体制を構築しておきましょう。
●ダイエットの経過測定例
お客様にとって、最もわかりやすい効果の判断基準は数字の増減です。
特にダイエットのような数字がシビアに関係してくる目標に対しては、細心の注意と準備が必要です。
もしも、ダイエットの経過測定に数字を用いずに、なんとなく「痩せた」「引き締まった」などの言葉だけだったとしたら、間違いなくお客様の納得度は低いでしょう。
それゆえに、ダイエットを目的としたお客様への経過測定は必ず体重をはじめとする体脂肪率、体水分率などの専門的な数字を用いて経過の測定と説明ができなければいけません。
その上で、説明するだけではなく、その理由や対策も理論的にお話できる準備をしておきましょう。
●姿勢改善の経過測定例
姿勢改善や痛みの軽減、予防などパーソナルトレーニングにはダイエット以外にも多くのニーズがあります。
その中には、数字での経過測定が難しい場合もあります。
姿勢の改善や痛みなどは、必ずしも数字で判断できるものではありません。
レッスン当日の天候や、お客様の前日の行動などで測定結果は大きく違ってしまう為です。
それでも、何かしらの経過測定によって納得して頂く為には以下の注意が必要です。
・経過測定をする際に
①なるべく同じ環境になるようにお客様へお願いする。
→食事のタイミング
→レッスンの時間帯
→睡眠時間
→前日の飲酒などの制限
→前日の運動制限
など
②それでも誤差が出てしまう事を了承してもらう。
→天候などで痛みが大きかった時
→思わぬトラブルなどの影響
など
これらを踏まえ、完全な測定が難しい事を説明し、その上で更にここから1歩前進してもらえるよう、個々のお客様になるべく近い症例などを数多く引き出しとして持っておく事が必要です。
その為に日々、勉強を怠らずお客様の心配を軽減できる準備を整えて参りましょう。
第2節「サービスを拡張させる食事管理」

パーソナルトレーニングには「食事管理のあるサービス」と「食事管理のないサービス」があります。
トレーナーによっては
「トレーナーはトレーニングを指導するのが仕事だから、必ずしも必要ではない。」
と、思う人もいるかもしれません。
確かに、食事管理を行わなくてもパーソナルトレーニングはサービスとして成り立っています。
ですが、お客様からしてみたら無いよりも有った方がサービスとして充実して見えます。
最近のパーソナルトレーナーはお客様の食事管理をLINEなどのチャットアプリで行う事が一般的です。
このスタイルはここ数年で急速に定着し、それはパーソナルトレーニングの標準的なサービスになりつつあるとさえ思います。
これ程までに食事管理がパーソナルトレーニングに定着した理由は幾つも考えられるので、私なりに紹介させて頂きます。
まず、トレーナー側のメリットとデメリットから紹介します。
まずはデメリットですが、単純に仕事量が増える事が1番に挙げられます。
毎日数人のお客様からお食事の報告や質問に答えなければいけませんから、レッスン以外でもそれなりの時間が必要となります。
大きなデメリットはそのくらいです。
では、メリットですが、これはデメリットに比べ幾つも挙げられます。
メリットのひとつ目は、サービスを単発販売から期間契約販売に設定できる事です。
例えば、お客様に「コースでお買い上げ頂くと毎日の食事管理サービスもさせて頂けます。その方が毎日繋がっていて指導がしやすく、お客様も緊張感が持続するので是非ご検討ください。」と、お薦めできます。
メリットのふたつ目は、サービス料金に説得力を持たせる事ができます。
例えば、他業種を例にとって考えてみると、英語を学ぶ時、先生から毎週60分レッスンを受けるのと、毎日LINEでチェックしてもらえるのとでは料金が違ってもおかしくないと感じます。
英語をどうしても習得したいのであれば、毎日チェックしてもらえるサービスは魅力的です。結果が出ないのは困りますから、例え料金が単発レッスンよりも高額でも毎日チェックのコースを選択するお客様はいらっしゃいます。
メリットの3つめは、お客様と繋がりができる事です。
お客様と繋がりができれば、緊急事態などの事態にもオンラインで指導する事ができます。
お客様がコースを終了された後でも、繋がってさえいれば、新しいサービスの紹介や出版する際などもお伝えする事ができます。
メリットの4つめは、トレーナーとしての実力が上がる事です。
お客様からの食事をチェックし続ける事で、お客様の性別や年齢、ライフスタイル別での食事パターンを知る事ができます。
お客様に結果が出ない場合は、食事を振り返り分析して考える事もできます。
お客様からわからない質問などを頂けば、その都度調べてお答えする事で自分の知識になります。
このように、トレーナーとしてはメリットの方が多いので、サービスに取り入れていないトレーナーは導入をお薦めします。
一方、お客様目線からのメリットとデメリットもお伝えします。
まずは、デメリットですが、お客様によっては送る事がストレスになる場合もあるので注意が必要です。
サービスのスタンスとしては、
「食事管理サービスは標準でコースに付いていますので、できれば毎日、お食事の報告をお願いします。もしもストレスになるようでしたら、お食事や栄養のご質問だけでもドシドシお送りください!」
のような感じでお伝えして、お客様に選択肢を渡してあげると安心して頂けると思います。
デメリットで更にもう一つは、「料金がその分高くなる」と言う事です。
「食事管理はいらないからその分安くして!」
と、考えるお客様がいらしてもおかしくありません。
それ故に、サービスをお客様にご案内する際は食事がトレーニング効果にも影響する事や、コースでの目標達成の為に食事管理だけではなく、毎日の体調管理も兼ねている旨をお伝えしておくと良いでしょう。
そして、メリットですが、
①いつでも質問や相談ができる
②コースの緊張感が持続する
③栄養について詳しくなる
など、特にダイエットが目的のお客様には嬉しいメリットがいっぱいです。
以上のように、パーソナルトレーニングサービスの中で食事管理を行う事は、双方にとって大変メリットが多く、サービスの可能性もまだ秘めているものと感じます。
現在、食事サポートを全く行っていないと言う方は、是非ご自分なりのサービスを検討されてみる事をオススメします。
4-3第3節「すべての土台になるスケジュール管理」

トレーナーが行うスケジュール管理は大きく分けて2つあります。
①お客様のトレーニングスケジュール
②トレーナー自身のタイムスケジュール
です。
どちらか一方でも疎かだと、サービスの継続は難しくなります。
例えば、トレーナーが自分のプライベートを優先し過ぎて、頻繁に急なお休みを取ったり、長期休暇を取りすぎていれば、お客様へ効率的なトレーニングスケジュールを提供する事は難しいと言えます。
優秀なトレーナーでも、レッスンを安定的にしてもらえないのならサービスとして信用度は低くなってしまいます。
その事から、トレーニングサービスにおいて最も大事な事はトレーナーが自身のタイムスケジュールを年間単位で管理できている事です。
「今年は盆と正月に5日間ずつ休暇を取ろう。その事はお客様へ3ヶ月前に必ず告知しよう。」
とか、
「レッスンのできるキャパシティは常に全体の7割程度に留めて、ご新規のカウンセリング枠は別に確保しておこう。」
など、
中長期から短期間のスケジュールまで、細かに把握しておく事はフリーランスで働く上で必須の能力と言えます。
4-4 第4節「未来を築く、自分の管理」

運動指導を仕事にする場合、どのような立場であっても将来を見据えて働かなければ、どんなトレーナーであっても危険です。
わかりやすく、2つの例で説明します。
例えば、スポーツジムの社員としてトレーナーになりレッスンやマシンインストラクターを続けたとします。この場合、将来を何も考えずに運動指導を続ければ、いつか会社内でのポジション争いで不利な立場になります。著者である私も27歳までジムの社員として働いていましたし、今でもジムの社員をしている友人と情報交換をしますので、リアルにその光景を目の当たりにしています。
どんなに優秀で人気のトレーナーでも、会社としては運動指導が得意な人よりも経営がわかる人を上の立場に立たせたいものです。簡単に言えばトレーナー職よりもフロント職の方が、同じ社員でも出世できる可能性が高いという事です。
では、社員トレーナーと言う立場で将来を見据えるとは、何をしたら良いのでしょう?
それは、毎日の指導の中で、将来、会社の集客に役立つだろう情報を現場ならではの視点でまとめておく事、さらに退会の傾向をデータ化し、その対応策を作っておく事です。この情報はネットで調べたら直ぐに出てくるようなものではなく、現場で活動していたからこそ得られるトレーナーならではの情報でなければいけません。さらにはその情報を出すタイミングや、プレゼンテーション能力など予め備えて準備をしておく必要もあります。
ジム経営の要は、集客数と継続率を伸ばす事です。お客様が通いたくなる理由を知っていて、退会しない為の施策も組み立てられる人財であれば、会社は必ず良いポストを用意します。
次の例は、フリーランスで働くパーソナルトレーナーやスタジオインストラクターです。
これらの立場の指導者の将来に特別な正解はありませんが、少なくともレッスンだけの毎日を繰り返していたら将来の選択肢は多くありません。
指導者も年齢により、置かれる状況も変わってくるでしょうから収入を上げていかなければいけません。
いつかはレッスン以外の仕事にも目を向けていかなければいけませんが、その為には準備をする時間とお金が必要です。正攻法としてはレッスン料金を値上げする事ですが、これができずに変化できない指導者は大変多いです。値上げと言っても1レッスンあたり1000円とか2000円の値上げでは未来が変わるほどではありません。思い切って2倍3倍の料金に上げ、新しい活動を作る自由な時間を捻出してこそ未来は開けます。そんな事は無理だと思えば、それまでですが、本当にやる気であれば、知恵は出てきます。例えば60分8000円の人なら90分18000円に変えてみる。値上げに対して周りの目が気になるなら、知り合いに見られないように活動範囲をずらしてみる。など、方法はいくらでもあります。
詳しくはTRAINER CLASSの「集客」のパートでお話をしますのでそちらも是非参考にしてみてください。
これらの例のように、運動指導者は日々のレッスンも大事ですが、自分の将来を考えることも非常に大事です。
安定感のある仕事とは言えない業種ですから、真剣に考えていきましょう。